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台東県延平郷桃源村:布農部落休間農場でブヌン族の文化体験。

台東県鹿野郷の渓谷
【台東県鹿野郷の渓谷。橋がなかった頃は集落が孤立していたかも】
2011年末の旅は花蓮から瑞穂、池上と、花連~台東を結ぶ花東公路の山側を鉄道で途中下車しつつ南下しました。
池上駅から台東県に入りゴールの台東は間近となったが、もう一回だけ途中下車。鹿野駅である。
鹿野駅周辺の鹿野郷はなだらかな丘陵地帯を利用したお茶の栽培が盛んで、温泉もわいています。
しかし、今回の目的地はその鹿野郷ではなく、鹿野郷のお隣の延平郷の桃源村です。

延平郷に住む住民の大半は原住民族のブヌン族。
彼らは元々島の山岳地帯に居住していたのですが、他の原住民族や漢人とのいざこざが絶えず、
さらに日本統治時代には日本人ともぶつかり、日本政府がこの地に定着させたそうだ。
桃源村は切り立った2本の渓谷V字型に囲まれています。
昔は今のように立派な橋もなかっただろうし、要するに他民族と生活空間を分離するためにここを選んだんだろう。

その桃源村にブヌン族の伝統と文化を継承するために作られた観光施設があります。
そこが今回の目的地です。

台湾は日本が統治する前から気候条件のいい西海岸にばかり人口が集中していました。
日本統治時代に花蓮などの港ができたり、日本人移民を入植させて東側も開発したりしたようですが、
現在もやはり政治・経済の中心は西海岸という構図は変わっていません。
そのため若者の多くが都会に出てしまい、田舎町が過疎化していくという日本と同じ問題を抱えています。

桃源村も過疎化の一途をたどっていた村の一つ。
そこで村民の経済的自立とブヌン族の民族文化の伝承と発展をめざし、一人の牧師さんが立ち上がりました。
その牧師さんが立ち上げたブヌン文教基金会の事業の一つが「布農部落休間農場」です。

布農部落周辺の景色。
布農部落周辺の景色。
ブヌン文教基金会のホームページを探しだし、メールで問い合わせると
すぐに宿泊予約OKの返信がきました。
鹿野駅までの迎えに来てくれるというので交通部鉄路管理局で時刻を調べ、
列車の到着時間を伝え、現在に至るのであります。

当日、迎えに来てくれたのは優しそうな顔立ちの大柄な男性で、
民族衣装と思われる織物のベストを着ていた。
黄色い車体のタクシーに乗せられた時にはすこしびっくりしてしまったが、
タクシー兼送迎車として使っている車のようでした。
時々、片言の英語や日本語で話してくれる気遣いが好印象です。

布農部落の入口
布農部落の入口。
車は緩やかな鹿野郷の茶畑を眺めながら少しずつ丘陵を登っていきます。
地図を見る限りでは道は単純でいざとなったら自力でもたどり着けるのでは
とタカをくくっていたが、人通りも少なく、目印もほとんどない田舎道な上に、
思っていた以上に駅から遠かった。迎えに来て貰ってよかった・・・。

ちなみに台東から延平郷まで来るバスは1日数本ありますが、
バス停から布農部落まで自分の力でたどりつくのは大変だと思います。
道路の所々に小さな看板がありましたが、見逃したら終わりです。
バスで来る場合も事前にバス停まで迎えに来て貰った方がよいと思います。

台湾原住民族影像誌
台湾原住民族影像誌。
英語、中国語、日本語と写真で
ブヌン族を紹介している。
今回は行きは鹿野駅まで迎えに来てもらい、帰りは四維のバス停まで
送ってもらいました。
四維は花東公路と呼ばれる省道9号線沿いにあるバス停で、
この道路沿いでは桃源村の最寄りのバス停です。
バス停の目の前に「脱線牧場」というドライブインがあるのが目印。
ここから布農部落休間農場までは道のりで2キロくらいです。


ところで、チェックインが終わったところで「ブヌンには興味がありますか?」と何の脈絡もなくきかれました。
意味かわからずとまどっていると、まるで百科事典と見まがうような一冊の分厚い本を持ってきてくれました。

キリリとした表情のブヌン族男性が表紙を飾る「台湾原住民族影像誌」。なんと著者は日本人です。
瀬川孝吉先生が台湾を渡り歩いて集めた資料や写真を湯浅浩史先生が1冊の本にまとめた物で、
ブヌン族の風習、行事、衣装に生活様式など様々な写真資料に簡潔な説明を3カ国語でまとめてあります。

中でももっとも印象に残ったのは「酒」のページです。
酒宴:年中行事として各種行事の他、冠婚葬祭の後には必ず酒宴が行われる。
飲・食・泥酔・歌謡・談話・舞踏・休憩が数日に渡り繰り返されることも珍しくない。
まさに酩酊!という感じの写真が添えられているところがまた圧巻。文化なのですなぁ。
(ケツ丸出しでうんこずわりしているおじさんのお尻とかも写っていたりする。でも学術資料。)

一方でこのブヌン文教基金会の活動の中に「アボリジニー禁酒センター」があったりするので、
飲酒が過ぎてアルコール中毒になってしまう問題もあるのかなと思ったりしました。

日本統治時代の台湾や朝鮮半島には日本の学者が学術調査に走り回っていたと聞きますが、
中には発表されておらず埋もれている研究成果もあるそうです。
この本はまさにそれをギリギリのところで発表が間に合った!というパワーを感じます。
しかも白黒とはいえ上質な紙のほとんど全ページに写真がいっぱい掲載されているのに、
値段が1800元程度だったのには驚いた。日本だと数万のオーダーだろ~。いや、びっくり。

もし興味があれば借りてみるといいですよ。かなり見応えアリの本です。
マジメな本だけど、写真ばっかりなので読みやすいです。

しかし、他民族との交流がうまくなかった民族だというのにここまで彼らの私生活に踏み込むことができたなんて、
この先生の人間性のなせる技なのかもしれません。

延平郷、桃源村、布農部落休間農場 関連の写真館

布農部落休間農場の施設はこんな感じ。

布農部落の入口
白牧師が過疎化や先住民族の社会的な傷害を乗り越えるために立ち上げた観光施設。 観光客に民族の伝統生活を紹介する活動を通じて文化の継承と現金収入を結びつけるのに成功しつつあると思いました。
伝統行事の紹介や体験、自家牧場や畑で取れた作物を使った料理の提供、 野菜や果物の加工品、伝統工芸品の販売などが主な収入源。 野菜や果物は無農薬にこだわって付加価値を付けています。
若い子たちが、受付、土産物屋、レストラン、ショーなどいろんな場所を兼務して働いていました。 がんばってるなぁとほほえましかった。
工芸や弓矢体験などは都会に住む子供たちが喜びそう。恐らく夏休みなど賑やかでしょう。
初めは牧師が1人で始めた事業ですが、現在、正職員が40人、準職員が40人いるそうです。
ここまで来るのに相当な努力があったのだろうなぁと感慨深い物がありました。

日帰りの場合、施設入場料が150NT$(施設内で使える金券100NT$付き)。
民宿宿泊者は、入場料は宿泊代に含まれ、さらにコーヒー1杯無料、おみやげ物15%割引券付き。
さらに閑散期は宿泊料に温泉入浴料もサービスです。(近くの温泉に無料送迎してくれます。後述。)

【現在ある施設(施設資料より)】部落劇場、部落民宿、部落お食事どころ、部落喫茶店、織物工房、会議室、有機農場、牧場、農産物加工工場、コンビニ、リバーサイドパーク、蝶蝶谷地区、山林生態公園。

布農部落入場券布農部落のオブジェ布農部落の木工加工場所布農部落の木のオブジェ
布農部落休間農場の部屋の外観布農部落休間農場の部屋布農部落休間農場の部屋2布農部落の畑などの敷地

ブヌン族舞踊&合唱ショー。


この施設の一番のメインがこのショー。毎日10:30~11:10と14:00~14:40の2回行われます。 ブヌン族は半音よりもさらに狭い音階を重ねた倍音複音式合唱法を誰に習ったわけでもなく、伝統生活の中で自然に身につけており、近年その歌声が世界中に注目されるようになったといいます。2005年には京都の合唱シンポジウムに招待されたそう。
伴奏もなく、声だけで紡ぎ出すハーモニーを踊りと共に舞台の上で表現します。 ただしお客が少ないと中止です。今回は日帰り観光客がそれなりにいたので2回とも上演されました。夜のコーラスは残念ながら表演なし。閑散期は土日がらみの方が確実かもしれません。

ブヌン族の八重唱のショーブヌン族の八重唱のショー2ブヌン族の八重唱のショー3

布農部落で食べられるご飯 紅焼羊肉爐

紅焼羊肉爐:醤油系の羊鍋セット
晩ご飯も宿泊客が少ないので小食堂のみの営業。メニューは鍋のみでした。 牛、豚、羊の中から羊を選ぶと「漢方薬使ってますけど大丈夫ですか?」と。 食べたら言うほど漢方きつくなく、上品で逆に驚きました。日本の薬膳鍋の方がもっと癖があるって。
テーブルに埋め込まれた電気鍋の中に薬膳スープと羊が入っており、 豆腐や油揚げ、野菜を煮ながら食べます。写真は一人分。
お酒は自家製の小米酒(粟の酒)。売店で売ってるのと同じ値段だけど、 売店は割引券が使えるので損した気分。
朝食は自家製ジャムや豆、野菜など健康的なメニューのバイキング。珍しいので一口ずついろいろ取ってみた。

布農部落休間農場の鍋用無農薬野菜台東県 布農部落の羊肉爐(羊鍋)を煮込んでいるところ小米酒 朝食バイキング

桃源村の集落の様子

桃源村の役場前にあったブヌン族の像
桃源村の周辺を散歩してみました。村役場の前にどん!とブヌン族を模した像が建っていてびっくり。 側面に民族の歴史や特徴などが簡単に紹介してありました。一番最後に音楽的才能が素晴らしく、世界にその名を轟かせている件が書いてありました。一番の民族の誇りなのかもしれません。

集落を歩いてみると、前日に訪れた花蓮県の紅葉地区と同じように、入口の門やポストを村全体で統一してありました。紅葉村は手作りの紅葉の彫刻だったけど、木材を模した門を始め、名前がどーんと書かれた木製の表札など全体に立派でした。
もしかしたらこれ行政が動いて町おこしに働きかけてるんではないかなぁと思った。 台東県なのか台湾政府なのかはたまた原住民族の組織なのかはわかりませんが。

集落の家の門集落のポスト野菜を売るテントの横に原住民族が彫られた柱

鹿野地区農会渓遊季温泉

鹿野地区農会渓遊季温泉
閑散期の場合宿泊料の中に温泉入場料も含まれています。(大浴場のみ。個室を希望する場合は追加料金アリ。)本当はブヌン文教基金会は台東県の紅葉温泉を経営していたのですが、2008年に台風による土砂崩れで温泉が埋まってしまったらしく、再開の目処が立っていません。そこで現在は近くの鹿野地区の温泉に連れて行ってくれす。送迎は無料です。(要予約。)
近くにある別の日帰り温泉のHPに源泉は紅葉温泉と同じとあったのでここも同じでしょう。
この日はたまたまマレーシアからの華人団体客のバスが2台来ており賑やかでした。 彼らが去った後は貸し切りに。(とっぷり日も暮れましたけど。)

鹿野地区温泉日が暮れた後の温泉日が暮れた後の温泉

鹿野 四維バス停前の脱線牧場で紅烏龍茶を土産に買う。

脱線牧場
温泉の事務所の横に無料のお茶がありました。紅烏龍茶です。 一口のんでその美味しさにびっくり! そういえば鹿野駅から延平まで茶畑の間を延々と抜けてきたではないか!
桃源村の雑貨やにはめぼしいものがなく、布農部落にも売っておらず、諦めていたら 四維のバス停前のドライブインでお茶屋を発見!「紅烏龍ありますか?」「ありますよ!」と試飲させてくれました。
紅烏龍茶は1斤1500円と高級品でしたが、無理を言って少しだけ買った。(おばちゃん変な顔してた。)お詫びに宣伝します。

鹿野のお茶を売るお店紅ウーロン茶お茶屋産の名刺釈迦頭

台湾 東海岸の旅に行きたくなったら・・・物価と旅程の目安にどうぞ。

旅行時期:2011年12月
 1NT$=約2.7円

■交通:列車 池上-鹿野 64NT$、バス 四維 62元
■食事:紅焼羊肉爐 350NT$、小米酒 350NT$
■その他:紅烏龍茶 350NT$(1斤1500NT$)
■宿泊:布農部落休間農場 1800元(送迎、温泉付き)

■成田-台湾航空券 直行便で20,000円前後~。
 台北便は通常チャイナエアラインが最も安く、続いてエヴァエア、日系という順で高くなります。
 ジェットスターなどの格安航空会社も出てきました。年末などの繁忙期は検討の価値もあるかも。
 また、日本発が午後便だと台北での活動時間が減るので午前便より安い。
 高雄便もあるけど台北に比べたら本数も少なく、おまけに台北-高雄間は新幹線で2時間。
 お金と日程、旅の目的を計算して上手に選びたい。

旅程を立てるために参考にした本やウェブサイト
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