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トオサンの桜 平野久美子

台湾 寒緋桜 アジアに留学したり、関わった多くの人が「日本人はもっと○○のことに関心を持つべきだ」と言う。
○○に入るのはインドネシアだったり、タイだったり。その最たる物は台湾だ。
そのようなことを言う人の言い分は、相手の国の人は日本にとても関心と愛情を持ってくれているのに、 日本人はまるで興味を示さない。という言い方で書かれていることが多い。
多くの日本人はアメリカや欧米諸国にあこがれ、アジアに興味を示さないので、 だからそういった国の人々と関わってみると日本人として歯がゆさを感じてしまうのだろう。

私の場合も多くの日本人と同じく、若い頃は歴史や文化にまるで興味がなく、
極端なことを言えば「今、自分が楽しければいいや」という方だったと思う。
しかし、ようやくここに来て、この「日本人としての歯がゆさ」を感じるようになった一人である。


この本は現在の台湾でもう数少なくなった日本統治時代をしる台湾のトオサンたちが、
どのような思いで人生を過ごしてきたかを知るのによい本だ。
現在は日本に帰化し日本人になった金美齢さんよりもう一回り上の世代の方が多く登場し、
日本統治の状況や敗戦後、歴史に翻弄されながらも生きてきた彼らの人生が切々と伝わる。

私は若い頃は台湾人も支配者の日本人を嫌っていたけど、戦後の中国がひどすぎて、
比較対照として日本人の株が上がったと単純に思っていたのだが、
それ以上に日本を好きでいてくれる多くのお年寄りは、人格者として立派な日本人に
出会っていたということが大きかったのだと、この本を読んで改めて認識をしました。

日本統治時代をしる台湾人で日本を好きでいてくれる人の多くは、
だいたいにして子供の頃の恩師のことを必ずあげるのです。

特に多くの親日派の人たちは、教育熱心な教師、恩師への感謝をあげます。
昔の日本の教師がどれだけ使命感をもって立派だったかを外国人から言われるほど
誇らしいことはありません。その反面、今の教育界を考えると地に落ちたなぁという感じで、
ちょっとは関わってきた物として穴があったら入りたい感じ。(結局私は逃げたんで。)

そして、今でも日本人以上に日本に関心を持って厳しい意見を言ってくれるそうです。

正直であること。礼儀正しくいること。時間を守ること。などなど。
教育勅語、道徳教育を大切にしていることがよくわかります。

この前、10年ぶりに台湾に行きましたが、妙にリラックスできることに感動してしまいました。
変な話、人も車もバイクも交通ルールを守るのです。
赤信号で車がちゃんと止まるから道路を渡れるし、横断歩道を人がわたっているときに
右折車はクラクションもなさらず、人がわたるのを静かに待つのです。

これ、日本では当たり前のことですけども、外国では全然当たり前じゃないんですよ。
人を引いて怪我させてもそのまんまなんてことが日常茶飯事の国って多いです。
アジアの先進国の一つである某国は車優先だと聞いたことがあります。
交通弱者の歩行者の方が気を遣う必要があり、道歩くの疲れます。
ルールも道徳もなにもあったもんじゃない国に近代化の波が押し寄せてる例も多く、
そういう国だと無法地帯です。(そういう国に限って交差点がなくロータリー式なので大変。)

だから、久しぶりに台湾を訪れて、ものすごく楽なのに驚きました。
我々が当たり前と思っていたことが台湾でも当たり前だったからです。

若い頃は外国と日本が違うことにカルチャーショックを感じておもしろがっていましたが、
よく某国のこと「人生観変わるっていうよね~」とか人に言われるけど、
私は台湾で人生観変わったかもしれません。

ただ台湾に住んでいただけなのに、次々と違う国に支配され苦労をしてきたことでしょう。
それでもイヤな思いをしたことを被害者意識で非難するのではなく、
感謝すべきことは感謝し、苦言を述べるべきことは冷静な意見として話してくれる。
そして、何よりも日本に愛情を持ってくれている台湾のこの世代のトオサンたちを
我々日本人は知っておきたい。

この本のストーリーの中心にいるのは桜です。
日本統治が終わった直後に日本支配の象徴として多くの桜が切り落とされたそうですが、
今ではとあるトオサンの尽力で霧社の方に桜並木があるそうです。
いつかその桜を見に行ってみたいと、この本を読んだ日本人は誰もが思うでしょう。

我々は自由に台湾に旅行できるし、台湾の人も日本にたくさん来てくれるし、
親日だっていうし、私たちも台湾好きだし、なんて軽く考えてしまいがちです。

でも今の台湾の中年世代は両親の日本精神と国民党支配の反日教育の狭間で生きてきた人です。
私もこの前まで台湾で反日教育をされていたことは知らなかったくらいです。
日本軍が撤退した後、国民党軍に中国の内戦のために兵士として送り込まれ、
中国に置き去りにされている台湾人もたくさんいるそうです。

幸いにも国交がない今でも台湾と日本は友好関係を保っていますが、
台湾の複雑な事情を今の日本人はもっと知っておいた方がよいなぁと思いました。
「李登輝元相当世代が200歳まで生きると勘違いしてる」ってこの本にもありました。
そのことも肝に銘じて起きたいところです。