プユマ族大猟祭2011:狩りを終えた男たちが山から帰還!
【2011年の大猟祭の凱旋門。前日に作っている姿をバスから見かけた。】
毎年12月下旬から行われる「猴祭」は民族の成人式の様な意味合いを持ちます。
かつてプユマの少年は12歳になると家庭を離れ、集会所で共同生活を送っていたそうです。
先輩たちに民族のしきたりの教えを受けながら、子供たちは成長していきました。
長老の話によると、かつては少年たちは猿も一緒に共同生活をしていたそうです。
長い間寝食を共にすると猿と人間の間にも情が生まれ、ノミ取りをしあうほど気心が知れるそうです。
ところが、少年と猿が兄弟の様に仲良くなったところで、友達の猿を自分の手で殺さなければいけません。
どんなに仲がよい友達でも場合によっては戦わなければならない場面があるかもしれない。
猿との共同生活と、猿との別れを通して、戦いとはどういうものかを教えていたんだそう。
少年たちの精神的な強さや民族の団結心を養うために行われていた儀式の一つだそうですが、
そうやってプユマの男は成長するのだな。確かにあっという間に大人になりそうだ。
さて、現在でも同様のことが行われているかといえば、そうではありません。
今は集会所での集団生活はしておらず、少年たちは自分たちの家庭で生活をしているそうです。
現在は「猴祭」の形は現代に合わせた形で変化しつつ、民族の大事な行事として今でも行われています。
少年たちは民族の中壮年、長老たちと3日もの間、狩りなどをしながら3晩山で過ごします。
(竹竿で猴を刺す儀式は籐製の人形を使うそうな。)
そして、男たちが降りてきたところを女性が花輪や凱旋門を作って出迎えたところで、大猟祭の始まりです。
プユマ青年集会所。
こちらの公園は台東駅を移転工事の作業中に遺跡が出てしまい、
急遽公園として整備されたといういきさつでできたところです。
その広場の青年集会所前が今回の会場です。
あいにくこの日は空模様が優れず、時折パラパラと小雨が降ります。
気温も低く、冬用のコートを着てちょうどいいくらい。結構、寒い。
会場の卑南文化公園の近くに来ると、ずらりと並んだRV車の脇に
民族衣装を身にまとった屈強な男たちが立っていた。
あ、今時は車で行くんですね。山ごもり。(←なんか想像と違う。)
そして、公園の敷地内に入ると、上半身は裸、腰巻き一枚を身につけた
若者たちが道路の隅に座り込んでいた。
プユマの人たちは階級によって身につける衣装が違うのである。
賑わう大猟祭の会場。
卑南文化公園でした。
そしてその円形の敷地のさらに外側に各地区ごとに分かれて座席が設けられており、
その中の一つに招き入れてもらった。
今回の大猟祭は民族舞踊団:高山舞集の林さんが取り仕切っており、
マイクを持ってなにやら叫びながら、会場中を飛び回っている。
話を聞いていると中国語、台湾語、民族の言葉など言葉を使い分けながら、
進行を説明しているようだが、「はい、いちくみ!×××。にくみ。さんくみ・・・」ってあれ日本語?
公園の隅でスタンバイする。
長老も歩いて向かう。
要するにそれと同じことらしい。
日本の行事のようにキッチリとしたプログラムがあるでもなく、どうやって始まるのかが不明だったのだが、
気が付くと公園の隅の方に男たちが徐々に集まり始め、女性たちはそわそわと沿道に並びだした。
そして、何の前触れもなく、「ヒョォ~!」と雄叫びをあげながら男たちが走り出した。
大猟祭の始まりである。
卑南族(プユマ族)大猟祭 関連の写真館
男たちが山ごもりから部落に帰ってくるのである。
次いでやってきたのは中壮年の男たち。少年はまっすぐに駆け抜けたのだけども、道の右端を手前に来ては反転して戻り、また来ては戻りと螺旋を描くかの様に少しずつ前に進む。(説明しづらいので左の動画みてください。)
しばらくすると、道の真ん中を長老たちがゆっくりと歩いて進んできた。 実はこの中壮年の男たちは長老の周りをぐるぐる回るように走ることで、長老の身を守っているのだそうだ。 長老が無事に凱旋門をくぐり抜けるまで、「ひょぉ~」と雄叫びをあげながらぐるぐると長老の周りを回っていました。
長老たちが正装を身にまとう。
女性たちが準備していた衣装や花輪を長老たちに着せ、長老は正装になります。 プユマの人たちは年齢や社会的役割により衣装が大きく違うため、長老の衣装が最も鮮やかで立派です。
裸同然で布きれ一枚のみの少年と比べると違いが一目瞭然です。
ちなみに中壮年は頭に手ぬぐい、下半身の前身頃だけカバーのような形の衣装を身につけていますが、これは猟のための衣装のようです。藪をかき分ける時に頭や足を保護する役目みたい。
流れはよくわからないがご飯の時間になった。
(長老が正装に着替えた後年越しの歌を歌うのだそうですが、・・・うたってたかな?憶えてません。)
ご馳走になったのは原住民族の料理で、豆を入れて炊いたおこわに高菜の漬け物を巻いて食べるものや粟の粽、魚の唐揚げなど。
そして、冬の定番だという鶏酒。こちらは鶏肉を生姜、棗、米酒という台湾の焼酎と一緒に煮込んだスープです。
最初に戴いた鶏酒はアルコールを控えめだったため、オーソドックスな方の鍋を覗いていたらくれました。
塩味もあまりついておらず、酒の匂いがプンプンする面白い味のスープです。
酒に弱い人は間違いなく酔います。
これ子供が呑んでも大丈夫なんだろうか?
(台東市長が例の名入りベスト着て、またいた。→)
みんな食べるのに夢中だけどお祭りの真っ最中です。
どうも男たちが3日間の山ごもりで採ってきた獲物を女性に受け渡す儀式のようです。
「うわー沢山猟れたのね!びっくり!」というゼスチャーの後、獲物を受け取り会場をぐるりと一回り。 中身は鹿のようです。
獲った獲物は山の上で捌くんだって。傷むからかな・・・。
狩猟コンテストの表彰式。
お孫さんが表彰されていたおばあさんに「なんで表彰されたの?」と聞いたところ、 獲物を沢山捕ったからだそうです。お孫さん、ムササビ王!
いつの間にか踊りの輪ができていた。
10人くらいの若者が踊り始めると少しずつ少しずつ手が繋がり、踊りの隊列が伸び、最終的には和になっておどろ~です!
ところで、最初に会場の外に向かって駆け抜けていった少年たちだけは謎のままです。 連れは「絶対に着替えて混じってご飯食べてるよ」って言うんだけども・・・。それはしきたり上よいんだろうか?
さあ、お祭りはまだまだ続きます。
台湾東海岸の旅に行きたくなったら・・・
旅行時期:2011年12月 1NT$=約2.7円
■交通:バス 台東市内-卑南文化公園 23NT$(最低料金※今回は車で連れてきてもらった。)
■宿泊:MATAインディジナスカルチャーホテル(原住民族文化会館) 950~1050元
■成田-台湾航空券 直行便で20,000円前後~。
台北便は通常チャイナエアラインが最も安く、続いてエヴァエア、日系という順で高くなります。
ジェットスターなどの格安航空会社も出てきました。年末などの繁忙期は検討の価値もあるかも。
また、日本発が午後便だと台北での活動時間が減るので午前便より安い。
高雄便もあるけど台北に比べたら本数も少なく、おまけに台北-高雄間は新幹線で2時間。
お金と日程、旅の目的を計算して上手に選びたい。