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プユマ式結婚式 :婚礼会場。牛車と台東市長と普悠瑪族。

牛車を引く牛がスタンバイ
【牛が草むらにスタンバイ。牛車を引っ張る陰の主役。この子でかいんです。】
いよいよ、台湾旅行のメインイベントである結婚式の当日になりました。
今回の結婚式は前回の豊年祭の時に知り合った一人の日本人文化人類学者の先生が主役です。

「台湾でプユマ式の結婚式を挙げることになりました。前後にお祭りもあるし興味があったらどうぞ。」

とのお誘いを受け、何の迷いもなく「行きます!」と返事するずうずうしさに自分でもあきれるが、
こんな機会は滅多にないことで大変ありがたくお誘いをお受けしました。

しかし、プユマ式という式のイメージがわきません。
お祭りに関してはネットで検索すれば出てきますのである程度の予備知識は入れておけましたが、
結婚式の情報はあまりない。日本人夫妻が先住民族式の婚礼をあげるなど前例がないのだ。
「プユマの伝統料理が食べられるかも。」「民族衣装を着るだろう」「音楽と踊りで盛り上がりそう」など、
あまりに乏しい創造力。
主催者に話を聞けば、「牛車に乗せて入場する。」とかこれまで日本で列席した結婚式とはますます異なり、
おまけに会場はあの大猟祭をやった卑南文化公園である。どんだけ大規模なんだ。

ところで今回の式は主役の親族はもちろんのこと、新婦の日台の友人、知人が駆けつけていました。
私は2日前の大猟祭、この結婚式共に同宿の日本人2組と一緒に行動していました。
その中の一人、関西在住のTさんは2ヶ月ほど前にカナダ人男性と結婚したばかり。

「あんたたちも新婚じゃないの!一緒に祝わなきゃ。主役が乗る牛車の後ろにくっついて来なさい。」

後ろにくっついてくるなんて従者のような絵を想像してしまいますます混乱するのだが(従者は前か?)、
こんな感じで、プユマ式の結婚式が始まるのであった。

お祝いに持っていった日本酒
祝い酒の日本酒と焼酎を持参。
手ぬぐいと風呂敷いいでしょ?
会場の卑南文化公園に着くと、まだ結婚式の準備中だった。
テントが2張り建っている他は2日前の大猟祭と同じ。
若い子たちが場内の中心にあった普悠瑪大猟祭というのぼり旗を
普悠瑪婚禮(プユマ婚礼)に変更しているところだった。

「休憩用にどうぞ。座って」と促されたテントの柱には式次第を張っている。
興味深いのは「新婦の名前」「新郎の名前」の順に書かれていたこと。
台湾の先住民族はアミ族を始め母系氏族があるのだ。
男が女に婿入りするのである。なるほど。こういうトコに現れるのか。

牛がひっぱる車
牛がひっぱる車
ついこないだどこかで読んだんだけど(出典わすれました。)、 その民族は特に女性がとても強いらしく、男は外で働いて稼ぎを家に入れるのが仕事。
何らかの不都合で母ちゃんに嫌われると、 仕事から帰ったら父ちゃんの持ち物全て家の外に出されていて、離縁されたりするそうだ。
日本ではどちらかというと稼いでいる方がふんぞり返る傾向があるので、
「そんなことできちゃうの?」ととってもびっくりした。
(その分家督を守る女の責任が重そうだが。)

牛が車と繋がれて牛車スタンバイ
牛車スタンバイ開始!
プユマ族も基本的には母系のようです。
2日前の大猟祭の晩に鹿のスープをご馳走になった時、
「鹿ってこっちじゃどうやって料理するんですか?」と聞いたら、
「焼いたりとか。でも私は料理しないからわからない。」とどキッパリ。
料理は全て長男がやるのでやったことないそうです。

日本人の発想だと「母が料理しないなら、長男はどうやって料理をおぼえたの?」となりますが、それこそ男は働き、女は家事という戦後のサラリーマン世代の常識にとらわれた発想だ。

男が婿入りする風習があり、大家族で助け合いながら暮らしていたといいます。
大家族の中の誰かが料理をしていたわけで、別に母がしなくてもよいのである。母はきっと働いていたのだ。
そして、料理の好きな長男が料理を憶えたのだろう。(長男の嫁はするのかは聞かなかったが。)

日本の外にちょっと出るだけで、毎日が非常識の連続。必ず何かしら新しい気づきがあって面白いものです。

プユマ結婚式ののぼり
普悠瑪婚禮(婚礼)
さて、会場の外に目をやると、公園の隅の草むらに牛の姿があった。
日本では見たことのない巨大な牛が、長いロープで繋がれているのだが、
そのロープの先を結んでいるのはそれこそ、そこに生えてる草である。(意味ない。)

しかし、タイの象使いによると調教始めに象を頑丈な杭に繋いでおくと、 抵抗しても抵抗しても杭が外れないので、無駄な抵抗だと頭の中にすり込まれてしまい、 以後、ちょっとした棒を地面に刺してロープをくくるだけでも「逃げられない」と思いこんで逃げなくなるそうだ。

プユマ結婚式ののぼり
普悠瑪婚禮。式次第。
この牛も傍らに座っている牛飼いのおじさんが、びしっと調教したのかもしれない。
(いつも家族同然に大事にしているから安心感で逃げないだけかもしれないけどね。)

そうこうしているうちに牛は車に繋がれ、牛車がスタンバイ。
会場から50メートルほど南に下った木の下に移動し、主役の到着を待っている。

するとそれを前後して、牛が繋がれていた草むらの脇道に
ガラスにスモークフィルムが張られた怪しい黒塗りの車が滑り込んできた。
車内からはずんぐりした眼鏡の中年男性が降り立つ。陳台東市長である。

台東市長。またいる。
陳建閣台東市長。
公用車日本車
車から降り立った市長は車内から例の黒い名入りのベストを取り出して羽織った。
ベストには原住民族風の刺繍が施されており、その横に「台東市長 陳建閣」
縦に金の糸で刺繍が入っているのだ。

今回の台湾滞在中は台湾総統選挙と立法委員選挙の真っ最中だったわけだが、 現職の政治家だけでなく、候補者も選挙運動中に似たようなベストを着ていた。
しかも立候補者だけでなく、「○○氏夫人」と候補者の奥さんまで名入りベストを羽織り、 選挙活動に奔走していた。(花蓮地区の候補者夫人と握手してしまった。)

日本じゃここまで政治家が主張すると嫌われそうだけど、あえてダサイ感じが面白いというか、 また文化の違いにほのぼのしてしまいました。

飾られた車で主役登場
ちなみに市長は挙式直前に黒い名入りベストを脱ぎ、ブルーのベストに着替えました。
プユマの女性の衣装や新郎の上着などがこの鮮やかなブルーだったので、民族のカラーなのかもしれません。
そういえば二日前の大猟祭では黒い方でしたが、TPOでいろいろ使い分けているのかも。

さて、公園の南からリボンで飾られたシルバーの車が入ってきました。
いよいよ主役の登場のようです。(最初の登場は現代風。→)

その他の会場の様子。

婿入り道具
会場の中央に様々な道具が並んでいました。嫁入り道具ならぬ婿入り道具です。 新郎が農具やびんろうや粟などを持参して婿入りします。

そして列席者は花輪を頭にかけてもらって凱旋門をくぐり、新郎新婦の到着を待つのでした。

びんろう、粟、農具など列席者も花輪をかけて貰って凱旋門を通る

台湾 東海岸の旅に行きたくなったら・・・物価と旅程の目安にどうぞ。

旅行時期:2011年12月
1NT$=約2.7円

■交通:バス 台東市内-卑南文化公園 23NT$(最低料金※今回は車で連れてきてもらった。
■宿泊:原住民族文化会館 950~1050元

■成田-台湾航空券 直行便で20,000円前後~。
 台北便は通常チャイナエアラインが最も安く、続いてエヴァエア、日系という順で高くなります。
 ジェットスターなどの格安航空会社も出てきました。年末などの繁忙期は検討の価値もあるかも。
 また、日本発が午後便だと台北での活動時間が減るので午前便より安い。
 高雄便もあるけど台北に比べたら本数も少なく、おまけに台北-高雄間は新幹線で2時間。
 お金と日程、旅の目的を計算して上手に選びたい。

旅程を立てるために参考にした本やウェブサイト
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